またの冬が始まるよ


ウチのメシアは天然なので



今年は春も夏も秋も前倒しで、
それは駆け足でやってきたことへの今更の帳尻合わせなのか、
師走に入ってもなかなか冬らしい寒さにはならぬまま。
土地によっては
12月なのに20度以上という“夏日”を記録したところさえあったほど。
そうは言ってもさすがに暦の流れは留めておけずで、
赤や緑のリボンにキラキラ光るグラスボール、
星や天使のオーナメントなどが吊るされた大きなツリーは
足元へダミーだろう銀紙や大きなリボンで飾られたプレゼントの箱に囲まれていて。
金や銀のモールに縁どられ、LEDの電飾が華やかな、
それはそれは大きなディスプレイが飾られ、
流行のクリスマスソングがそこかしこから聞こえる駅前なぞは、
どことなくそわそわと浮き足立ったような人々の笑顔があふれていたし。
住宅街でも お手製のそれかイルミネーションが灯されているのを見かけると、
よそのお宅のものであれ、何とはなく心が浮きたってしまう今日この頃。
立川の住宅街の中ほどに位置する小さなアパートにお住いの
実は最聖、天界からバカンスに降り立ってこられたイエスとブッダのお二人も、
傍観者として眺めていたらしいのは初年度だけで、
大掃除に年賀状の準備に除夜の鐘といった年越しの行事に腕まくりしたり、
その直前にはクリスマスがあって、
でもでも日本ではここなりの扱いをしていることへもやや振り回されたりもしと、
何年目となるものかの“日本の師走”のあれこれを、
時にワクワク、時にほのぼのと堪能していらっしゃり。

 「忘年会といえば、竜二さんから誘われてるけどどうする?」
 「そうそう。静子さんからも是非って言われちゃった。」

朝ごはんも終えて、洗濯物も干し出したしという午前中のインターバル。
今日はこれと言う予定もないものだから、
お昼に買い物に出るまでのひと時を、ワイドショーなぞ観つつ過ごしていたのだが、
そこで紹介されるあれやこれやに 身近な用件を思い出してるお暢気さ。
しっかり者のブッダ様が
大掃除や買い出しへの計画をしっかり順序立てて把握しているせいもあったし、
冒頭にあげたように、身が縮こまるよな寒さに襲われてないというのも多少は関係あるのかも。

 「何か芸とかご披露しなきゃいけないのかな。」
 「ゲームとかお歌でもいいんじゃないの?」

奇跡はダメだからね、奇跡はと、
そこへの釘をさすのも忘れないところが彼ららしい事情だったりするのだが。(笑)
こんな会話になったのも、ちょうどテレビ画面の中で
クリスマスパーティーや忘年会でのエピソードいろいろが紹介されていたからで。

 【そうそう、引っ掛かっちゃうんですよね。】
 【つか、今時 “十回ゲーム”ぅ?】

同じフレーズを10回言わせ、
その単語への引っかけになる簡単なクイズを出して言い間違いを誘うという、
単純だけれど何だか笑える、
そんなパーティーゲームが紹介されたのへ、

 「あ、そうか。膝じゃなくて肘か。」

ワンテンポ遅れて理解したイエスなのが可愛いなぁと、
バラエティ番組の方は二の次に追いやる格好、
身内の呟きの方へとついつい目許を細めたブッダ様。
王様ゲームだの山手線ゲームだの、
もはや王道、若しくは時代遅れとされるよなパーティーゲームの数々は、
今でこそノリも判るようになったれど、
初めて知ったときはさすがに
ブッダ自身もあわわと振り回されてばかりいたし、

 “浄土の面々へはやっぱりなかなか広まりはしなかろな。”

それは気真面目に1つ1つを取り上げ、丁寧に噛み砕いてから答えてくれそうで、
いえ―い、引っかかったなぁ♪と笑って盛り上がる系統の遊びは、
どこが面白いのかへまずは馴染まねばという
長い長い道のりを経ねばいけないかもしれないなぁ、なんて。
無邪気に笑っておいでの同居人、
いやいや、今や愛しい伴侶様…なのを、
そうと意識した途端に喉奥がきゅんと柔くしまったり、
頬がえもいわれぬ熱に炙られたりするのへ、
まだまだ性懲りもなくドキドキしてしまっておれば。

 「ねえねえブッダ、私たちもあれやろうよvv」
 「え?」

今日は少し寒かったのでと、朝の内はスイッチを入れていたこたつに入ったまま、
角を挟んでのお隣り同士、テレビと差し向かいになるよう座っていた二人。
なので、すぐ間近からかかった無邪気な申し出へ、
まずは、やだ見惚れてたのに気づかれちゃった?と
とくんと胸が跳ね上がりかけたブッダであり。
いやいやそうじゃないってと、即座に突っ込みを入れて事なきを得たものの、

 「あれって、10回ゲームのこと?」

確かに楽しそうではあったが、
即座にお題というかネタが浮かぶものだろかと、
そこを案じて訊き返したところ、

 「うんっ。」

いかにもの西欧人、彫も深くて男臭い風貌、しかもお髭つきだというに、
切れ長で眼窩も深い目許を大きく見張り、
それは溌剌とお元気に頷くいとけない態度が

 “…何でこうも似合うかな。//////”

いやん、可愛いじゃないのと、
あっさり萌えてしまえるブッダ様なのも大概ですが。(こらこら)
ともあれ、何か思いついたからこそのお誘いであるらしいと察し、
しょうがないなぁとの苦笑とともに、

 「いいよ、面白そうvv」

お付き合いいたしますとの意を示せば、
やったぁとますます笑みを濃くしてから、

 「じゃあ私からね?」

やはり何か思いつきがあってのお誘いだったようで、
それでも一応はということか、
考え込むように視線を左右に泳がせ、わざとらしくも“う〜ん”なんて唸って見せてから、
よぉ〜しとの自信満々、
それは楽しそうに ヨシュア様が紡ぎ出したお題はと言えば、


 「好きって10回言ってみて?」

 「………………はい?////////」


さてここで問題です。(笑)
じゃあなくて。
本当に何も考えてはないままに
別の言い間違いを引き出すクイズを思いついたイエスだったのか。
それとも、もしかしてもしかしたら
勢いあまってフライングしてしまい、
言わせたかったフレーズを先に言っちゃったイエスだったのか。
そして、どっちにしたって、

 “だとしたって…。/////////”

何と言い間違えたのかな、キスって10回言ってみてだったりして?
というか、此処は気づかない振りした方がいいのかな。
ああでもそんな、
じゃあ、好きって言わなきゃいけないの?//////////

 「〜〜〜〜。///////////」

そんなこんなという悩ましい煩悶に
胸の内をもみくちゃにされてるブッダ様だとも知らず、

 「♪♪」

にっこにこと笑顔で待ってるヨシュア様。
相変わらず、罪作りなお人なのでございます。






   〜Fine〜  15.12.17.


 *あああ、もっとちゃんとしたネタとお話もあるんですが…。
  クリスマスも間近だってのに、こんなのでお茶濁ししてすいません。


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